
印刷業の化学物質リスクアセスメント|SDS確認手順【2026年版】
印刷資材の化学物質リスクアセスメントは、SDSと実際の使用工程を突き合わせ、対象物か、どこで誰がばく露するか、どの措置と記録が必要かを順に評価します。資材一覧だけを作っても、開放作業、混合、洗浄、乾燥、換気、作業時間が分からなければ現場のリスクを評価できません。
本記事では、インキ、洗浄剤、湿し水、接着剤、粘着剤、UV関連材料の6群を確認例として、対象判定から低減措置、記録、周知、再評価までを整理します。6群すべてが法定対象という意味ではなく、SDSと作業実態から個別に判断します。
印刷資材のリスクアセスメント対象を確認する
全化学物質が一律対象ではない
労働安全衛生法57条の3は、事業者がリスクアセスメント対象物による危険性・有害性等を調査し、その結果に基づく措置を講じる枠組みを定めています。化学物質という名称だけで全資材を一律対象にせず、対象物への該当性を確認します。
対象外と判断した資材も、確認したSDSの版、確認日、担当、再確認条件を記録します。対象物の追加やSDS改訂があったときに、前回の結論を無条件で流用しないためです。
SDSとラベルから対象性を確認する
労働安全衛生法57条の2は、対象物を譲渡・提供する者による情報通知を定めています。印刷会社が資材を受け取る場面ではSDSを対象性や危険性・有害性の情報源として使いますが、印刷会社が常にSDSを作成する義務を負うという主語へ置き換えません。
仕入品名、資材コード、SDSの改訂日、ラベル、メーカー名を突き合わせ、現物容器から最新資料へ戻れるようにします。労働安全衛生法57条の2・57条の3を起点に、対象と事業者の措置を分け、印刷の入稿データ保管・管理方法と同様に資料の所在・版を確認してください。
印刷資材をSDSと工程で確認する
インキ・洗浄剤・湿し水を確認する
インキでは調色・補充・拭取り、洗浄剤ではブランケット・ローラー・器具の洗浄、湿し水では調製・補充を作業単位で確認します。SDSの記載だけでなく、使用量、開放時間、飛散、皮膚接触、換気、保護具、従事者を現場で確認します。
同じ資材でも自動供給と手作業、小分けと原容器では作業条件が異なります。印刷工場の有機溶剤作業主任者の対象確認とも接続しつつ、作業主任者の選任とリスクアセスメントを別の義務として整理します。
接着剤・粘着剤・UV関連材料を確認する
加工工程の接着剤・粘着剤、印刷・乾燥工程のUV関連材料も、商品群の名称で対象・対象外を決めません。塗布、圧着、硬化、清掃、交換、廃棄など、通常作業と非定常作業を分けてSDSと照合します。
UV関連材料は、カタログ上の用途だけでなく、現場での容器開放、こぼれ処理、保守時の接触を確認します。外注工程の資材を自社作業の台帳へ混ぜず、自社事業場で扱う範囲を明確にしてください。
使用量だけでなく作業方法・場所・時間を確認する
使用量は重要な確認項目ですが、量だけでリスクを決めるものではありません。同じ量でも、密閉設備か開放容器か、局所排気装置が有効か、作業時間がどの程度か、複数資材を同時に使うかで状況が変わります。
作業者への聞き取りでは、標準手順だけでなく、洗浄、詰まり除去、設備停止、こぼれ対応などの非定常作業を確認します。印刷の作業指示書を電子化する方法を活用し、作業方法の版と現場の実態を照合してください。
| 資材群 | 使用工程の例 | SDSとラベル | 現場で確認すること | 変更トリガー |
|---|---|---|---|---|
| インキ | 調色・供給・拭取り | 対象性、危険性・有害性 | 混合、飛散、接触、換気 | 銘柄・配合・供給方法 |
| 洗浄剤 | ブランケット・器具洗浄 | 対象性、取扱注意 | 開放作業、時間、保護具 | 資材・洗浄手順 |
| 湿し水 | 調製・補充 | 対象性、含有情報 | 混合、補充、保管 | 配合・補充方法 |
| 接着剤 | 塗布・圧着 | 対象性、取扱注意 | 塗布方法、換気、接触 | 製品・塗布設備 |
| 粘着剤 | 貼合・清掃 | 対象性、取扱注意 | 取扱量、清掃、廃棄 | 工程・清掃方法 |
| UV関連材料 | 印刷・硬化・保守 | 対象性、危険性・有害性 | 容器開放、保守、こぼれ | 材料・設備・保守 |
この「SDS×工程×変更トリガー」判定マップは、印刷HUBの4工程ボード、作業指示、監査ログという実装事実を基にした独自編集フレームです。6資材を法定対象と決める表ではなく、確認漏れと再評価漏れを防ぐための棚卸し表です。


評価・低減措置・記録を進める
危険性・有害性とばく露を評価する
対象物を確認したら、SDSの危険性・有害性と、作業方法、場所、時間、換気、接触経路からばく露の状況を評価します。通常作業と非定常作業を分け、誰がいつ関与するかを工程表へ落とします。
評価は担当者の感覚だけで決めず、使用条件、既存設備、保護具、過去の変更を記録します。印刷業の化学物質管理者の役割分担に沿って、必要な権限を持つ担当が評価と措置を管理します。
措置、結果、周知を記録する
労働安全衛生規則577条の2は、代替物の使用、発散源を密閉する設備、局所排気装置・全体換気装置、作業方法の改善、保護具等によって、ばく露を最小限にする措置を求めています。保護具だけを最初の選択肢に固定せず、設備・換気・作業方法を含めて検討します。
同規則34条の2の8に従い、対象物の名称、業務内容、結果、講じる措置を記録し、関係労働者へ周知します。記録場所、周知日、周知方法、未完了措置の担当も一組にしてください。
措置後は、設備や手順が計画どおり使われているかを現場で確認します。評価表を完成させることを終点にせず、作業指示への反映、作業者への説明、未完了措置の期限、再確認結果までを同じ評価番号で追ってください。

新規資材・工程変更で再評価する
採用・変更・有害性変化をトリガー化する
リスクアセスメントは、原材料等の新規採用・変更、作業方法・手順の新規採用・変更、危険性・有害性に変化が生じたときなどに実施します。労働安全衛生規則34条の2の7に沿い、購買・工程変更の承認を再評価のトリガーにし、印刷工場の安全衛生・化学物質管理年間カレンダーへ配置します。
リスクアセスメント記録は、次にリスクアセスメントを行うまでの期間保存し、実施日から3年以内に次回を行った場合は3年間保存します。単純な「常に3年保存」とせず、同規則34条の2の8の条件で管理します。
なお、同規則577条の2に基づくばく露低減措置等の定期記録には、1年を超えない期間ごとに1回、原則3年、一部30年という別の要件があります。二つの記録を同じ年限にまとめないでください。

印刷HUBにSDS管理やリスクアセスメント台帳の専用機能はありません。案件、作業指示、変更履歴は再評価の契機を把握する補助情報として使い、法定記録と周知は別途要件どおり管理します。

新規資材と作業変更を案件・作業指示へ残し、変更前後を追う補助運用は、印刷HUBの資料請求・無料で製品体験で確認できます。安全衛生の専用台帳としての利用を前提にしないでください。
よくある質問(FAQ)
すべてのインキ・洗浄剤が対象ですか
いいえ。リスクアセスメント対象物かをSDS等で確認し、実際の取扱作業と突き合わせます(労働安全衛生法57条の3)。商品群や資材名だけで一律に対象と判断しません。
リスクアセスメントはいつ実施しますか
原材料等の新規採用・変更、作業方法・手順の新規採用・変更、危険性・有害性の変化時等です(労働安全衛生規則34条の2の7)。一律の定期頻度へ置き換えず、変更をトリガーにします。
記録はどのくらい保存しますか
次にリスクアセスメントを行うまでの期間保存し、実施日から3年以内に次回を行った場合は3年間保存します。労働安全衛生規則577条の2の別記録と混同しません(労働安全衛生規則34条の2の8)。
まとめ
印刷資材のリスクアセスメントは、SDSと現場作業を突き合わせ、対象性、作業方法、場所、時間、換気、ばく露、措置を順に評価します。インキ等の6資材群は確認例であり、個々の資材が対象かをSDSと一次資料で判断してください。
新規採用、資材変更、作業手順変更、有害性変化を再評価のトリガーにし、結果、措置、周知を記録します。印刷HUBの作業指示と監査ログは変更把握を補助しますが、SDSと法定記録は別途管理します。現場確認まで続けてください。
資材・作業指示・変更履歴を案件と工程へつなぎたい方は、印刷HUBの資料請求・無料で製品体験をご利用ください。料金プランでは導入条件を確認できます。
監修:依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
印刷会社の受発注・工程・原価管理など基幹業務のデジタル化に取り組み、本記事はSDSと現場作業を突き合わせて再評価まで追えるよう設計・確認しています。
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